ふじや ブロマイド店

 ところは有楽町、昔は日劇と読売新聞社のビルの間の道を抜けたところ、今となってはどちらの建物も無く、現在はマリオンの裏手になるのだが、そこに間口一間の小さなお店「ふじやブロマイド店」がある。初代である佐藤忠さんという方がお店を始めたのが昭和24年(1949年)だというので、かれこれ50年以上前になる。自分がふじやさんに通いはじめた昭和51年頃には、すでに2代目の高橋繁さんが店に立っていた。初代の長女と御結婚なされた高橋さんは昭和42年から店を継いだそうです。この狭い店の中に宝塚のグッツがぎっしり詰まっている光景は、なぜか何時見てもワクワクする。東京宝塚劇場とJR有楽町駅との中間地点にあるこの店は、ファンが観劇前や後に必ずと言って良いほど立ち寄る場所である。東京の宝塚ファンなら誰でも思い出がある店でしょう!

「ふじや」さんの思い出
 僕が通いはじめた昭和51年頃は、店に向かって右側にカウンターがあって、2人ぐらいなら店の中に入れました。その頃も宝塚の商品は多かったのですが、今ほどではなかったような気がします。店の壁にはブロマイドがズラ〜と差し込んであって、それを入れる額縁なども扱っていました。日本人の歌手や外国の映画スターのブロマイドなどもあり、ある意味ほんとうに「ブロマイド店」であった。高橋のおじさんに、見たいスターの名前を言うと、棚からそのスターのブロマイドの束を出してくれました。小学生で男の子のお客であった僕は、ちょっと珍しかったせいか(と言うよりブキミ?)すぐに顔を覚えていただき、常連客としていつも親切にしていただきました。(というよりどのお客さまにも親切だっただけなんでしょうが....)小学生から中学生の頃なので、まだ親からお小遣いをもらっていたわけですが、お金があるとすぐにココに来てブロマイドやらレコードやら雑誌を買い漁っていました。僕の時代は鳳蘭、榛名由利などの時代ですが、僕はこの頃からもう古い宝塚に興味があって、すでに退団した人のブロマイドが欲しくて、「おじさん、真帆志ぶきのブロマイド残ってる?甲にしきは?上月晃は?.....」とお願いしては、おじさんはわざわざ棚の奥から売れ残った退団スターのブロマイドをその都度引っぱり出して売ってくれました。(古い宝塚スターの売れ残ったブロマイドを漁る小学生!やっぱりブキミだ....)当時宝塚のレコードはすでに東宝から発売されていましたが、店に売れ残ってるコロムビア時代の実況録音のLPが数枚あって、そんなのを手に入れた時はもうスゴい貴重品をゲットしたような気になって有頂天になっていました。「この店のどこかにまだまだお宝が眠っている」そう思った僕は、もうカウンターの裏や隅っこが気になって気になってしかたがなかった。僕は真剣に宝塚のブロマイド屋をやりたいと思った事がある。いや今でもやりたい気持ちは残っている。ホントに高橋のおじさんの息子として産まれなかった自分が悔やまれてしょうがない。10年ぐらい前から店を継いでいらっしゃる息子さんの雄二さんがうらやまし〜と思う次第です。 

いつまでも残しておきたい空間

 旧東京宝塚劇場の下には「歌劇センター」という場所があって、宝塚友の会のカウンターや、出版物全般を扱っている直営店みたいなお店がありました。だけど店員の人はホントに無愛想で、どこかお客を見下しているような雰囲気がありました。旧劇場の建て替えと同時に「歌劇センター」も無くなり、現在「キャトルレーブ」がその代わりをはたしてます。「歌劇センター」の頃よりはるかに感じの良い接客になりましたが、どこか高級店のようなよそよそしさがあります。それより僕はふじやで「あっいらっしゃ〜い。今観てきた帰り?どうだった?」って話しかけてくれる高橋のおじさんの笑顔を見ながら買い物をするほうが嬉しい。もっともキャトルレーブで店員さんとお客が親しく立ち話をしてたら、他のお客が不愉快になるので、ああいう店ではあっちゃいけない接客スタイルなんですがね。広くて綺麗で自由に見てまわれるキャトルレーブはあれでいいのだと思う。でも「商売」だけでなく、我々お客とのコミュニケーションがある「ふじや」のようなお店が僕はには捨てがたい。我々が宝塚が好きで、観劇した帰りにどんな気持ちでブロマイドや歌劇を買っているのか高橋のおじさんはわかっているのである。ただの「金ずる」扱いは決してしない。

 宝塚から温泉街の雰囲気がなくなり、両劇場も綺麗になり、「歌劇センター」が「キャトルレーブ」とお洒落に変わり、どこか高級ブランドのようになってしまった現在の宝塚だが、この「ふじやブロマイド店」の空間には、気取りのない「庶民の娯楽」として親しみやすかった頃の宝塚の空気がそのまま残っています。

 2代目の高橋繁さんと、息子さんで3代目の雄二さん。宝塚ファンのお客さまに対するやさしい笑顔もちゃんと3代目に受け継がれていますよ。

住所 東京都千代田区有楽町2ー8ー16

電話 03ー3211ー8963

営業時間 午前11時〜午後9時

定休日なし

現在は丸井になり店舗はございません。

 有楽町駅前の一帯が新開発で2005年5月の初め頃、昭和24年10月から56年間も同じ場所で続いたお店はいったん閉店になりました。新しいビルが建った時にはまたお店を再会すると伺っていました。しかし昔からの雰囲気が残っていたこの店がなくなってしまうのは、なんとも淋しいことです。そして新しいビルがオープンし後に様子を見に行ったら、ふじやブロマイド店はありませんでした。

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(こちらの画像は全部勝手に複写、使用しないでください。)

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