終戦後も１９５０年代に入ると、アメリカ映画の中で日本が舞台になっている作品が時たま登場するようになる。敵国日本は、もはやエキゾチックでオリエンタルな不思議の国へと変わってゆくのである。１９５７年にワーナー・ブラザーズ社は、マーロン・ブランド主演で「サヨナラ」という映画を製作しました。朝鮮戦争の関係で日本に駐屯している米軍パイロットと、架空の歌劇団のトップスターとの恋愛モノで、当時まだあった米国人と日本人の恋愛に対する差別がいかに大きかったかが物語から伺えます。今でも時たまあるが、ハリウッドが日本を描こうとすると、みょうちくりんな描写が登場する。この映画にも当然出てくるのだが、一応ちゃんと日本でロケをしているので、１９５７年当時の日本の風景を見る事ができる。そして我々レビューファンには、なんと言っても当事の松竹歌劇団のレビューシーンが見れることが重要なのである。映画冒頭のクレジットには＜SHOCHIKU KAGEKIDAN GIRLS REVUE＞と出てくる。レビューシーンはちゃんと日本の舞台でロケされているようである。その劇場の雰囲気が国際劇場とは大きさも雰囲気も違うので、僕は大阪にあった大劇ではないかと察している。もしそうであれば、これはＳＫＤではなく、大阪松竹歌劇団、ＯＳＫのメンバーの可能性のが高い。舞台はちゃんとエプロンステージがある。物語の中では松竹歌劇団ではなく＜松林（マツバヤシ）歌劇団＞という女性だけの劇団という設定になっている。たぶん当事上演されていた公演の場面に、主役で歌劇団のトップスターという役の高 美以子を入れこんで撮影されたのでしょう。フィナーレでは、松竹歌劇のテーマ曲である「さくら咲く国」を聞く事ができます。

マツバヤシ歌劇団の生徒は寄宿舎に住んでいて、劇場へ向かう時みんなニ列になって「通りゃんせ」を歌いながら出勤します。

寄宿舎から続く橋のたもとにはファンたちがお出迎え。

トップスター、ハナオギの登場。意味もなく尾長鶏を手渡されて受取り優雅にポーズ。

待望のレビュー場面！満員の客席。当事の雰囲気が伝わってきてワクワクする。

マンボのリズムにのってエプロンステージにならんで踊る。

トップスター、ハナオギの見せ場。ちょうちんがキレイ。

トップスター、ハナオギ役の高 美以子のソロ場面がいくつか挿入されていますが、そこは別撮りで、スタジオで撮影されたようです。

大階段が出てきて華やかなラインダンス。

SKDの定番である傘を持って「さくら咲く国」の大合唱。

グランドフィナーレ。

ハナオギとの結婚を決心したマーロン・ブランド扮するグルーパー少佐は歌劇団の寄宿舎にのりこみます。この橋の向こうに寄宿舎があるという設定。どう見ても庭園にしか見えない。

マツバヤシ歌劇団の寄宿舎入口。どう見てもお寺。

寄宿舎の中へ。やっぱりお寺じゃ。

中では生徒たちが日舞のお稽古中。ギュウギュウ詰め状態。

別の教室ではバレエのお稽古中。たたみの部屋で踊ってるし....

ハナオギ役の高 美以子さんはＳＫＤ出身ではなさそうなので、レビューシーンはぎこちなくて、ちょっと残念ですが、実際のＳＫＤの生徒さんたちはホンモノなので、１９５７年当時のレビューが見れる貴重な映像だと思います。余談ですが、この映画にはミヨシ梅木という、ミュージカル「フラワー・ドラムソング」などでアメリカで活躍したスターも出演しています。ジャズシンガーとしてレコードも沢山出しています。この映画では、役柄の都合上、彼女のミュージカルナンバーが見れないのがちょっと残念ですが、アメリカ兵と結婚した、しとやかな日本人女性の役を上手くこなしております。あと１９４０年代にＭＧＭミュージカルでも活躍したリカルド・モンタルバンが、日本の歌舞伎役者、中村という役で登場しているのも意外で面白いです。実際の歌舞伎の場面もこなしており、完璧に日本人に見えるとはいいがたいのですが、その努力には拍手してあげたくなります。

２００４年２月２０日、この映画のＤＶＤが日本でも発売されました。 「サヨナラ」　( GXBJA-25718 ) 定価　￥２０７９　（税込み） 発売元 ２０世紀フォックス　ホームエンターテイメント　ジャパン株式会社 （現在値段が変更になってるかもしれません。）

昭和２９年４月号の歌劇誌に掲載された文章です。作者のジェームス・ミッチェナーが「サヨナラ」を書くにあたって、宝塚の関係者から色々と協力してもらった事と同時に、この物語がフィクションである事を語っています。歌劇団のスターが外人と恋をするという設定は、当時の歌劇ファンには刺激的すぎたのでしょう。 （２００５／３／２８）

日本公開当時のプログラム（Ｂ５版サイズ）ですが、松竹歌劇団の事はなにも触れられていないのに驚きました。